■■■SHOCKING PINK

日々の徒然をダラダラと。

ひんしねこ

様子のおかしい猫を見た。
建物の間際、壁に向かって座っている。
近付いてもこちらに気付かない。
声をかけても顔はおろか耳すらこちらに向けない。
鼻づまりのような呼吸をゆっくりとしている。


かなり近付いて、覗き込むようにして大丈夫ですかと話しかけたら、やっとこちらに向けた顔は、目が開いていなかった。
涙とも目やにともつかぬ液体で顔面ぐしょ濡れだった。


風邪にしては毛並みがつやつやしている。腰から下がふっくらしていて、腹に子供がいるようにも見える。


猫の耳は、反射で音のする方に向くのではなかったかしら。このこは耳が聞こえなかったのではないだろうか。
濡れているように見えた顔面、あれは体液ではなくて、心ない人間に何か粘性の液体をかけられたのではないだろうか。
耳にもそれを入れられていたとしたら。


何もせずその場を離れた。平日の夜に気の毒な動物を見つけても、何もできない。正直、厄介事はしょい込みたくない。


わたしの猫好きなんて、上っ面のもんだ。


寒い夜だった。保護する勇気がなくても、せめて布っきれでもかけて差し上げに行こうかどうか、迷って思考停止して寝てしまった。



翌朝、気にしてその道を通ってみたが、案の定その猫の姿はなかった。
朝早い商店の駐車場だったから、もし動けないまま朝になっても従業員のひとが早朝動かしたんだろう。


しょんぼりする。しょんぼりする。